オーケストラ 演奏家たちの「給料」はどれくらいなの? 楽器によって差はあるの?【齋藤真知亜】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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オーケストラ 演奏家たちの「給料」はどれくらいなの? 楽器によって差はあるの?【齋藤真知亜】

知られざるオーケストラの世界

 

■出番のない楽器も同じギャラは不公平?

 

 白状すれば、僕はかつて「楽器が違うのに給料が同じなんて」と思ったことがあります。オーケストラの中でもっとも高音域を担当し、主旋律を弾くことも多い第1ヴァイオリンは、コントラバスが「ブォーン」と1音弾いている間に16個もの音符を弾かなくてはなりません。音符1個あたりの給料を考えたら、なんとなく損をしている気分がしたのです。

 同じことを考えたのかどうかはわかりませんが、以前、先輩が打楽器セクションの方に、「いいよな、シンバル1回叩くだけで給料は一緒なんて」と冗談めかして話しかけたことがあります。

 するとその打楽器奏者の方は真剣な表情で、「うるせぇ、シンバル1個で演奏会を生かすのも叩き潰すのも俺なんだよ!」と言いました。

 確かにその通りなのです。ある日の練習のとき、何かの拍子にシンバルが床に落ちたことがありましたが、その音のすさまじさときたら! 文字でしか伝えられないことがもどかしく感じます。もし本番だったら、間違いなく演奏会は滅茶苦茶になっていたでしょう。

 打楽器に限らず、管楽器なども、演奏者が2、3人しかいないという楽器は少なくありません。しかもシンバルやトランペット、トロンボーンなど、音に破壊力がある楽器ばかりです。それにたとえ出番は少なくても、ほかの人たちが演奏している間、じっと自分のタイミングを待つのは大変なことです。しかも自分の1音で演奏会を潰すこともあると思えば、逆に一人当たりの責任は16人いるヴァイオリンより重いという考え方もできます。

 つまり、それぞれの楽器の重要性は、音符の多さだけでは測れないということであり、だから楽器による差はないのです。

 先ほども触れましたが、給料は年齢や在籍年数に準じています。1年早く入団した人は、1年分の経験を積んでいる。だから早く入団した人ほど経験値が高く、そのぶん給料も高くなるそんな考えに基づいた給与体系です。

 海外のオーケストラには演奏のうまい下手や、楽団への貢献度で給料が変わるところもあるようですが、やはり「経験値=給料」というのは誰もが納得しやすいシステムではないでしょうか。

(『クラシック音楽を10倍楽しむ  魔境のオーケストラ入門』から本文抜粋)

文:齋藤真知亜

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齋藤真知亜&齋藤律子のデュオ〝ニコイチヴァイオリン〟

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齋藤真知亜

さいとうまちあ

NHK交響楽団 第一バイオリン・フォアシュピーラー

東京都出身。東京藝術大学附属音楽高校を経て、東京藝大を首席卒業。1986年5月1日N響入団。1999年から毎年開催している自主企画リサイタルのシリーズ「Biologue」「Quattro Piaceri」、バルトーク全曲演奏に挑んだ「ヴィルトゥオーゾ・カルテット」や、民族楽器によるコンサートにも注目が集まっている。また、ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラでは、山本直純氏の遺志を受け継ぎ、指揮・指導を行っている。大学や個人レッスンのほか、個人でもアンサンブルなどを率いて活動中。


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  • 齋藤 真知亜
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